「専業主婦は『働いてる』とは言わないの?」話題のマンガの夫の言葉「うちの奥さんは同僚」がグッとくる理由
元日本テレビ解説委員でジャーナリストの岸田雪子氏が、子育ての身近な悩みや課題を取り上げる新連載「岸田雪子のBloom Room」。笑顔の“つぼみ”を花開かせる小部屋です。今回は、話題のツイートから“働くこと“について考えます。
SNSでマンガを発表しているみこまるさん(@micomalu)さんの作品が「泣ける」「素敵なお話」と話題になりました。専業主婦の主人公に対する夫の言葉は、確かにグッとくるものがあります。まずはその内容をご紹介します。
「今、働いてないんだっけ?」という女友達の言葉に「私自身を否定されたよう」に感じ落ち込む主人公。その妻を、「うちの奥さんは最高の同僚だ」と表現した夫の存在。
この「最高の同僚」というフレーズが、こうもグッとくるのは、専業主婦が抱える「孤独感」の裏返しのように思えます。
「今しかない、子どもとの時間」を大切にしようと納得して選んだはずなのに、社会に役立てているんだろうか?自分の存在意義は?と自問自答してしまう。それは「主夫」とされる男性も同じかもしれません。
その自問自答に、ほかでもないパートナーから、「あなたはあなたのままでいい。ひとりじゃない」と全肯定と感謝が伝わるからこそ、「最高の同僚」は心に響くのでしょう。
そもそも「専業主婦」という職業が生まれたのは、ほんの100年前の大正時代のこと。そして第二次大戦後の高度成長期に「サラリーマン」が全国で増えるのにあわせて、家庭で支える「専業主婦」が定着したのですから、「良妻賢母」の歴史も、ごく浅いのです。
1人の稼ぎで家計を切り盛りできていた成長期だからこそ成り立っていた職業です。1人の稼ぎを2人で実現しているのですから、仮に賃金を換算するとすれば、「給与の半額相当」が妥当でしょう。
家事育児に全力を注ぐ上、家族への「気配り」という「感情労働」も担うのですから、まぎれもなく立派なお仕事。景気低迷が続く現代では、少数派に転じつつありますが、引け目を感じることなど全くないのです。
以前、この連載でも紹介しましたが、むしろ「専業主婦ママの方が、外で仕事を持つママよりも幸福度が高い」なんていう調査結果もあるほどです。マンガでは、「働いてないんだっけ?」と無神経な言葉を放つ姿として描かれた「女友達」も、「外で働く」女性ならではの悩みを抱えているかもしれませんね。「女の敵は女」なんてことではないはずです。
大切なのは「それぞれの幸福感」です。「外で働くこと」=「女性の活躍」なんて画一的なとらえ方は、政治のデリカシーのなさの表れでしょう。
「家事子育て専業」も「バリキャリ」も「産後の復職」も「パート勤務」も「子どもの成長後の就職や起業」も、多様な道「それぞれの幸福感」を守ることを抜きにして、少子化も労働力不足も、解消の道は遠いのです。
さて、地方選挙も衆議院選挙も控えた今年。女性それぞれの幸福について本気で取り組む候補者は誰か。まず知ろうとすることも、私たちにできる身近な変化の一歩ではないでしょうか。