『ガンダム 閃光のハサウェイ』リーダーとしての迷いを吐露するハサウェイの“迷”言
大ヒットとなった映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、アムロとシャアの最終決戦(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)の12年後が舞台。今回はマフティー(反地球連邦政府運動リーダー)としてのハサウェイの迷言(迷っている心情)を紹介。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、反地球連邦政府運動「マフティー」のリーダーであるハサウェイ・ノアが主人公。ハサウェイは偶然、敵対する連邦軍大佐ケネス・スレッグ、そして謎の美少女ギギ・アンダルシアと出会ってしまい――というストーリーです。
■「明後日のこと…か」
ダバオで乗ったタクシーの車内で運転手と会話を交わすハサウェイ。
マフティーは1000年後の未来を見据え、地球に住まう人類すべてを宇宙に移り住ませることで、地球の自然環境を回復させようという理念。しかし、運転手のように経済的に豊かではない層からすると、その思想は世迷い言にしか聞こえない様子。
1000年先を見据えるマフティーに対し嘲笑するように、運転手はこう言うのです。
「ヒマなんだねぇ、その人さ。“暮らし”って、そんな先考えているヒマはないやね。地球居住許可証を手に入れるんで、偉い人につぎ込むカネのことを考えたら、明後日のことなんか考えられないねぇ」
その運転手の言葉を聞き、「明後日のこと…か」と独り言ちるハサウェイ。そこには自分の進む道が果たして本当に正しいのかどうかという、迷いが透けて見えるのでした。
■「じゃあ教えてくれよ。この仕組みの深さを破壊する方法を……。人類全部が地球に住むことはできないんだ」
ホテルのベッドで横になり、天井を見つめるハサウェイ。タクシー運転手の言葉や、ギギの「マフティーのやり方、正しくないよ」という言葉が頭をよぎっています。
そして、このセリフ。
「じゃあ教えてくれよ。この仕組みの深さを破壊する方法を……。人類全部が地球に住むことはできないんだ」
ハサウェイはマフティーのリーダーとして、その仕組みをテロリズムで“破壊”しようとしているわけですが、彼自身もその方法が“正しい”とは思っていません。ベストな手段が見つからず、あくまでベターな手段としてテロで世界を変えようとしているのです……。
■「いくら高い理想を掲げても、そんなに人を殺してたら、いつかはマフティーが生贄になるなって」
マフティーのリーダーだという素性を隠して、地球連邦軍 ダバオ空軍基地の食堂にてケネス大佐と朝食をとるハサウェイ。
マフティーのおかげで寝る暇もないケネスが、「これまで閣僚が18人も殺されてるんだからな」と愚痴ると、ハサウェイがそれを受けてこう言うのです。
「いくら高い理想を掲げても、そんなに人を殺してたら、いつかはマフティーが生贄になるなって」
この言葉、自分がマフティー本人であることを隠し通すために、本心を偽ってケネスの言葉に同調しただけのようにも聞こえます。……が、自分の進む道に迷いのあるハサウェイが、偽りのない本心から言っていたようにも思えるのです。
そして、このハサウェイの言葉は、彼自身の未来(最期)を暗示していることになるのです……。