金メダルかじり市長が最悪のシチュエーションで全世界へとアピールした、ダメな意味での「人を瞬時で見抜く能力」

コラム

 

赤いジャージ姿に赤いマスクをつけた、黒髪おかっぱヘアの一見大人しそうな若い女性が、いかにも高いもんばっか食べていそうな脂ぎった恰幅の良い、スーツ姿で和風柄っぽいマスクをつけた60代後半から70代前半くらいに見える男の首に金メダルをかけた。その男は、珍しそうにメダルを手に取り、おもむろにマスクを下にずらして、まるで板チョコのようにそれをガブリとかじる。ほんのコンマ数秒ほど目をカッと見開いたあと、バツの悪そうな苦笑いでどうにか場を凌ぐ若い女性──言わずもがな、東京オリンピックのソフトボール日本代表で、名古屋市熱田区出身の後藤希友選手(20)が河村たかし名古屋市市長(72)に金メダル獲得を報告しに行った際に起きた、「愛情表現」を名目とする「金メダルかじり事件」の一部始終である。

 
ものすごいインパクトであった。

 
「いきなりなんちゅうことしでかすねん! このおっさん!?」

 
……と仰天した。明らかに「カチッ!」って音してたし……。すでに、同事件を知った後にこの映像を見た私ですらそんな風だったのだから、現場に居合わせていた関係者や報道陣のリアクション、凍てつきっぷりは想像に難くない。おそらく(後藤選手も含めて)一体なにがあったのか、状況を整理するのにしばらくの時間を要したのではないか?

 
『DIAMOND online』が「これまでは真っ二つに割れていた東京五輪開催に対する世論が、今回だけは一つになった」みたいな、いささか変わった視点でこの騒動について語っていた。

 
たしかに、マスコミ側からすれば、これほど叩きやすい案件もそうザラにはないだろう。五輪問題にかぎらず、「◯◯が100%悪い!」といった勧善懲悪な事例が安直に抽出できない、インターネットの進化に伴った言論のグローバル化が日に日にすすむ昨今、ここまでわかりやすい“悪代官さま”の登場は、ある意味貴重だとも言えなくはない。だって、どんなに頑張って逆転の発想からの奇抜な擁護の見解を主張しようにもやりようがない、批判するしかないんですもの……。

 
あと、

 
「これが仮に柔道の大野将平選手やウルフ・アロン選手のように猛者な男性が相手でも、河村市長は同様の行動に出ただろうか」

 
……と、“被害”に遭ったのが女性だったことに注目するコメントもネット上では散見されるという。なるほど。迂闊で本当に申し訳ないけど、私はそのような指摘もあることを耳にするまで、こういった女性蔑視的な着眼には気づくことができなかった。大野選手やウルフ選手の金メダルも“ちゃんと”かじったなら、それはそれですごいと思うが、まあかじらないでしょうね……確実に。

 
つまり、この河村たかしなる人物は「相手の性格を瞬時で見抜く能力」には、なかなかに長けているのかもしれない。いみじくも「その場では苦笑いするしかなかった」という後藤選手の穏やかな性格を的確に見抜いていたわけですから。その代償として「他人の金メダルをかじる」といった前代未聞の悪態を右から左から正面のアングルからスクープされ、世界中へと発信されてしまったのだが……。

 
相手の怒りの沸点を瞬発力のみで見極め、その「見極めた相手」をイジる度合いに(“決めつけ”に近い)ランクをつける人種が世の中には大なり小なり実在する。そして、その多くの者たちは、この手の“小器用さ”を“社交性”と勘違いしていたりする。もうちょっとでいいから、慎重な生き方をしてほしい。

 

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