イマドキの「失恋ソングランキング」には、「失恋」というワードがそのまんまタイトルに入っている、あの往年の名曲がランクインしていない!?
ランキング専門サイト『ランキングー!』が「2021年最新【泣ける】失恋ソング名曲ランキングTOP20<邦楽>」なるタイトルで、10代〜30代の男女2616名を対象に行なったランキング調査の結果を発表していた。とりあえずは選ばれた20曲のうちの「TOP10」を以下に紹介してみたい。
1位:『Pretender』 Official髭男dism
2位:『猫』 DISH//
3位:『ハッピーエンド』 back number
4位:『白日』 King Gnu
5位:『Love Story』 安室奈美恵
6位:『恋をしたから』 あいみょん
7位:『失恋〜君は今、幸せですか?〜』 ソナーポケット
8位:『ラストシーン』 いきものがかり
9位:『メトロノーム』 米津玄師
9位(同率):『夜空。Feat.ハジー』 miwa
さて。皆さまは、これら一連のラインナップを見て、どのような印象をお持ちになったことだろう? 10〜30代のヤングな方々は「わかるわかる〜!」って感じなんだろうか?
正直な話、私はどれも全然ピンとこなかった。「ピンとこなかった」どころか、知っている曲すら一曲もなかった。いくら、息子や娘くらいの(下手すりゃ孫くらいの?)年ごろの子たちが対象だったとはいえ、「失恋」という一世一代の“イベント”と向き合う感性に、ここまでの世代間ギャップが生じるとは!? いやはや、私もおっさんになっちゃったんだなぁ……と、つくづく痛感してしまう。
ちなみに、私のガチな「失恋ソング」……正確に表記すれば「失恋ミュージック」は、アート・ペッパーというJAZZアルトサックス奏者が1979年にリリースしたアルバム『So in Love』のB面一曲目に収録されている『Diane』なんだが、
まあ、こういったマニアックな選曲で、通ぶるのはやめておこう。我々アラカン世代にとってもっともポピュラーで、おそらく恋にやぶれたときに、誰もが一度は(もしくは何度も繰り返して)聴いたことがあるに違いない、「失恋ソング」の定番中の定番とくれば……やはり『失恋レストラン』ではあるまいか。
「失恋」したときに若者が入り浸る「喫茶店」でもなく「バー」でもない「レストラン」の心象風景を、違法薬物や轢き逃げなどで何度も警察のご厄介になっている、あの清水健太郎が朗々と唄い上げた、エレジー感あふれる昭和歌謡の名曲である。
タイトルにまんま「失恋」なるワードが組み込まれているのが、まず直球ド真ん中すぎて素晴らしい!
そのレストランは、失恋でポッカリ空いた胸の奥につめこむメシを食べさせてくれるらしい。
そんな失恋レストランには、好きな女に裏切られて笑いを忘れた道化師たちをはじめとし、いろんな人がやってくるという。
そして、そのレストランのマスターは「涙忘れるカクテル」をつくってくれたり、「痛みを癒すラプソティー」をうたってくれたり、ラストオーダーには「失恋までのフルコース」を演出してくれたりするのだ。
その「フルコース」を「ねぇーマスター ねぇマスター ねぇマスター はやく〜」と涙声でせがむ主人公(=清水健太郎?)──そう。愛をなくした手品師は、恋の魔術をもう使えないのだから……。
よく「失恋で食事もノドに通らない」なんて泣き言を耳にするが、もしこのような「メンタルをやられて消化機能が低下した胃袋に無理矢理でもつめこむメシを食べさせてくれるレストラン」が実在するならば、少なくとも体調管理の面ではじつにありがたく、失恋の傷だって、ちっとは早めに完治できるのかもしれない?