【ONEPIECE考察】そういえば海賊なのにどうして宝探しイベントがないの? 意外な理由

コラム

citrus 文月

 

今や世界中で人気の『ONEPIECE』。しかし、海賊をテーマにしたマンガでありながら、海賊ものにはありがちな「宝探し」的なイベントはほとんどありません。それはなぜか? 今回はONEPIECEが宝探しをメインに据えない理由を考察していきます。

 

 

■ONEPIECEの世界は過酷な身分・格差社会

ONEPIECEの世界は、海賊たちが自由気ままに冒険する世界――というイメージが強いですが、その現実は我々の想像を絶するほどの超身分・格差社会となっています。

まず、ONEPIECEには天竜人と呼ばれる超特権階級が存在するのです。彼らは法律上何をやっても罰せられない、例外的な立ち位置に存在し、作中ではその身分を利用して奴隷を乱暴に扱ったり、何の罪もない人々を面白半分で殺したりと暴虐の限りを尽くしています。また天竜人が何らかの理由で攻撃された際には、海軍大将が直々におもむき制裁を加えるなど、一般人は一切の抵抗ができないのです。

そして、世界各地ではそんな天竜人の圧政により貧困、飢饉に襲われる地域、国も珍しくはなく格差がとても激しいのです。そんな悲惨な現実に立ち向かう革命軍などの動きも活発なため、どこもかしこも戦乱、戦乱……。このように、ONEPIECEでは「支配と権力」が重要なテーマとして描かれています。

 

 

■ルフィたちは基本的に「宝探し」に興味がない

そんな悲惨な世界で主人公モンキー・D・ルフィは生まれました。ルフィは、支配の一極集中的な社会の存在を知っていたかどうかはさておき、最も自由な存在として海賊王を定義し、それを目指すようになります。

コミックス第52巻の「支配なんかしねェよ この海で一番自由な奴が 海賊王だ!!!」というセリフにもあるように、ルフィは権力よりも自由を追い求めているため、作中では理不尽な世界と対極に位置する自由の存在がより強調されているのです。

このように、ONEPIECEでは権力VS自由という構図がしばしば見られており、ルフィが海賊王になるということは歪な社会を変革しようとすることでもあるのでしょう。もっともルフィ自身がそこまで考えているかどうかは定かではありませんが、ともかく海賊王という存在にはそれだけ世界を変えるパワーがあるはず。それは、海賊王ゴールド・ロジャーの影響力を考えればおわかりでしょう。

ここで興味深いのがバギーとの違いです。バギーは海賊王であるゴールド・ロジャーが船長を務める「ロジャー海賊団」の元クルーでありながらも、その事実を隠し最弱の海・東の海(イーストブルー)で宝探しをしていました。ルフィたちと比較してみると、現実を顧みずに、自分の目先の利益だけ追い続ける存在として描かれています。

それを示しているメタファーこそが「宝探し」なのではないでしょうか。「宝探し」では世界は変革できませんし、空疎な満足感を与えるものにしかなりえません。メタ的に考えてルフィたちにとって「宝探し」がそこまで重要な目的ではないのは、仮に達成したとしても、そこまで世界に変化をもたらすわけではないからかもしれません。

 

 

■「夢」を追い続けることで「現実」を改革していく

ルフィたち麦わらの一味は、それぞれ夢を持っています。例えばゾロなら世界一の剣豪になること、ナミなら世界地図を完成させることなど、もし実現できれば世界が変えることができる夢ばかりです。

ルフィたちは、世界を変革できる夢を追い続けています。それは、端的に言えば世界をひっくり返すことであり、理不尽で閉鎖的な社会に一筋の希望を示すことにもなるのかもしれません。宝探しのような現実逃避の「夢」ではなく、追い続けることで世界を変える「夢」を物語の主軸に置くことでONEPIECEは、不条理な現実を打破するというテーマを内包することに成功しているように思えます。

――ONEPIECEは本質的には社会変革の話であるため、「宝探し」イベントが描かれないのだと考えられるのではないでしょうか。

 

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