『最愛』は間違いなく“2021年のベスト1恋愛ドラマ”だと恋愛コラムニストが推す理由

コラム

citrus 堺屋大地

 

恋愛コラムニストであり『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つドラマウォッチャーの筆者が、2021年の10月期ドラマ『最愛』(TBS系)を、“2021年のベスト1恋愛ドラマ”だと推す理由を紹介します。

 

 

■15年前に恋仲だった二人が引き裂かれたサスペンスラブドラマ

サスペンスラブストーリー『最愛』。

製薬事業で将来を有望視される主人公の女社長・真田梨央(吉高由里子さん)は、15年前に起きた殺人事件に関係しており、その過去にも関連がある現在の連続殺人事件の重要参考人となってしまいます。そして15年前に梨央と恋心を抱き合っていた宮崎大輝(松下洸平さん)は、梨央の関与が疑われる事件を追う警視庁の刑事になっていました。

本作は殺人事件というサスペンス要素と、大輝と梨央の恋愛要素を絶妙なバランスで融合させていますが、職業柄、筆者は恋愛要素重視で視聴していました。そして、筆者は恋愛コラムニストという肩書のもと、『最愛』を“2021年のベスト1恋愛ドラマ”として推しています。

なぜなら『最愛』はサスペンスとしても見応え充分ですが、それ以上に恋愛ドラマとしての完成度が非常に高かったからです。

 

 

■第1話、再会時の「はじめまして」が狂おしいほどに切ない…

まず第1話ラストで、梨央と大輝が重要参考人と刑事という関係性で再会したシーン。

大輝は梨央に対して戸惑いや未練のような表情を覗かせますが、梨央はあきらかに目の前の刑事が大輝であると気づきながら、淡々とこう告げるのです。

「はじめまして。警察の方がどういったご用件でしょうか」

第1話では、15年前の女子高生・大学生時代の二人のみずみずしい恋愛シーンも描かれていただけに、この「はじめまして」は狂おしいほどに切ない。

続く第2話では、大輝が梨央に任意同行を求め警察へ。このときの梨央はまだ15年ぶりに再会した大輝に心を開いておらず、淡々と事情聴取に答えます。そして、遺体発見現場にあった二人の思い出の“ある物”を見せられた梨央は、「刑事さんは? 刑事さんはコレ、見覚えありませんか?」と逆質問しながら、グイッと顔を近づけるのです。

梨央がまとった空気は妖艶で“魔性の女”のソレ。この時点では、大輝(および視聴者)はかつて恋していた女性が変ってしまっていたことに、強い戸惑いを覚えたことでしょう。このときの彼の心情を想像しても胸が張り裂けそうになりますね。

けれど、梨央は良い意味で魔性でもなんでもなく、実は昔のままの明るく清廉な女性でした。第2話のラストでは、夜道で助けてもらった大輝の服を汚してしまったことがきっかけで、二人は昔のように方言で語り合い、離れてしまっていた心の距離を再び縮めていきます。

このシーンでの大輝のヒーロー的な登場の仕方や、ほっこりする二人の方言でのやりとりは、険悪だった事情聴取での雰囲気とのギャップが際立ち、珠玉の恋愛シーンに昇華していたのです。

 

 

■最終回、“梨央の笑顔”は決して“簡単なこと”ではなかった

そして、迎えた最終回のラストシーン。

世間的には事件は未解決のままでしたが大輝は真相に辿り着いており、二人は梨央の父の墓参りに。大輝から幸せかと尋ねられた梨央は幸せだと答え、こんな会話を交わします。

「大ちゃんは? 幸せ?」

「俺は……お前が笑っとるの見とればそれでええ」

「簡単やな(笑)」

「簡単やわ、俺は」

大輝も、梨央も、そして視聴者も、知っているのです。それが“簡単”でもなんでもなかったことを。

数奇な運命により恋仲だった二人は引き裂かれ、15年も会えずにいました。そして再会してからも、過去と現在の殺人事件に翻弄されながら、二人はそのようやく苦難を乗り越えたのです。

大輝からするとその“梨央の笑顔”=“簡単なこと”は、15年以上の気の遠くなるような長い歳月と、悲しき運命の渦から必死にもがいて抜け出した先に、ようやく手にしたものだったというわけです。

本作は第1話のスタート時点から、バッドエンドフラグがいくつも立っていました。最終回を迎えた時点でも二人の関係が悲恋に終わるのではないかと、多くの視聴者がハラハラさせられていたことでしょう。

そんな梨央と大輝が微笑み合い、手を繋いで歩いて行くエンディング。二人の幸せを願っていた筆者をはじめとした多くの視聴者は安堵し、恋愛ドラマ的に至上のカタルシスを味わえたのでした。
 

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