【名探偵コナン】『ピアノソナタ「月光」殺人事件』ファンから “神回” と呼ばれる理由
1996年から放送されているご長寿ミステリーアニメ『名探偵コナン』。中でもコナンファンから “神回” と呼ばれており、 “犯人を絶対に死なせない” という現在のコナンの信条に深く関わっている『ピアノソナタ「月光」殺人事件』を紹介したい。
■『ピアノソナタ「月光」殺人事件』とは?
『ピアノソナタ「月光」殺人事件』は、1996年4月8日に放送された第11話目のエピソード。工藤新一の体が幼児化して江戸川コナンになって間もなくであり、まだまだ探偵行為で犯罪を暴くことの重さを理解していない頃の事件だ。
麻生圭二という謎の依頼人に呼び出された毛利小五郎は、毛利蘭とコナンとともに伊豆の小島・月影島に向かう。しかし島で依頼人の名前を尋ねると、依頼人は12年前に『月光』を弾きながら一家で心中したピアニストであることが判明。
死んだはずの人物からの依頼に、島民たちが祟りだと困惑するなか、コナンたちは一台のピアノを発見する。そのピアノは、麻生圭二が死んだ日の演奏会で『月光』を弾いていたものであり、月影島の前村長の死にも関係しているものだった。その日は折良く前村長の法事だったため、流れで参加することになったコナンたち。すると、なんと法事中に『月光』のメロディが流れだし、次期村長候補の1人である川島の遺体がピアノに腰掛けられていたのだ……。
■ミステリーアニメらしい緊張感と現実味のある秀逸なトリック
このエピソードが高く評価されている理由はいくつかあるが、なかでもミステリーアニメらしい不気味な展開と秀逸なトリックは大きなファクターだろう。
このエピソードは、周りを海で囲まれ、逃げ場のない伊豆の孤島で繰り広げられる、亡霊と思しき存在による殺人事件。そのストーリー展開は視聴者に緊張感を与え、画面に釘付けにさせる魅力に満ちている。
また、ピアノの鍵盤をアルファベットに当てはめるという、現実味のある秀逸なトリックも人気の秘訣ではないだろうか。物語の終盤、犯人である浅井成実が死の間際に弾いたメロディが、トリックの謎を解いたコナンにだけ伝わるメッセージになっているにくい演出も注目ポイント。アニメ版ではこのメロディを聴くことができるのだが、その響きはとても悲しい音色をしている。
■コナンが犯人を自殺させてしまった悲しいラスト
このエピソードが神回と呼ばれる最大の理由は、コナンが犯人を自殺に追い詰めてしまったという点にあるのではないだろうか。
誤解を恐れずに言うなら、それまでのコナンは謎を解き犯人を暴くことにスリルを感じており、ともすればゲーム感覚で推理していたフシもあったのかもしれない。しかしこの事件で犯人を自殺させてしまったことで、事件の真実を暴くことの重大さを知り、以降は事件に対して真剣に向き合うように成長していくようになった。
1997年10月27日に放送された78話「名家連続殺人事件(後編)」では、西の高校生探偵の服部に、「犯人を推理で追い込んでみすみす自殺させちまう探偵は…殺人者とかわんねーよ…」という言葉をかけるのだが、このときに回想しているのが浅井成実の最期。この場面からも、コナンが彼の死を胸に刻んでいることがうかがえる。