「切ない気持ち」ってどんな気持ちなんだろう?

コラム

 

春夏秋冬の季節ごとに、ニューシリーズが配信される、私がこよなく愛してやまない楽天の「お買いものパンダ・無料動画LINEスタンプ」の夏バージョンを、つい先日 "いつものように" ダウンロードした。

 

相も変わらずのハイクオリティ! パンダほど記号的に簡略化した「可愛らしいイラスト」に落とし込めるビジュアルキャラクターは、ほかのアニマルにはちょっと見当たらない。ただ、シンプルゆえに、顔の輪郭の丸の形だとか、目や鼻や耳の面積占有率だとか位置だとか、目の垂らし角度だとかがほんの数ミリズレただけで、全体像の印象がまったく変わってきてしまう。つまり、我々プロのイラストレーターにとってのパンダとは、デリケイトかつ果てしなく奥深い、本来ならばそう迂闊には手を出すことができない "鬼門の題材" なのである。

 

そんななかでも「お買いものパンダ」のバランスはすべて完ペキ! 線の太さも目と鼻の詰まり具合も、顔と胴の比率も絶妙だし、あの手癖だけで描いたような適当さ、あと、なによりも胸にある「楽天のRマーク」のやっつけ感が素晴らしい。

 

だがしかし……今回、そのうちの「浮き輪を腰につけながら涙を流す楽天パンダ」のスタンプを見て、なぜか急に切ない気持ちになってしまった。

 

 

「切ない」は、私がとても好きな言葉であり、会話中でも原稿を執筆する際にも好んで使用する形容詞の一つである。

 

ただ、「切ない」をここに持ってきたらしっくりとくるな……といった "使いどき" みたいなものはなんとなく把握してはいるんだけれど、じゃあ、

 

「『切ない』って…具体的にはどういうような気持ちのことを言うの?」

 

……と、問われたら、いささか答えに窮してしまう。

 

goo辞書で調べてみると、

 

悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるような気持ち。やりきれない。やるせない。

 

……とあった。英訳すれば「painful」。ちなみに「やるせない」の意味は

 

思いを晴らすすべがない。どうしようもない。

 

……であるらしい。

 

「浮き輪」という「夏のお楽しみ」をもっとも象徴するアイテムと「悲しい=泣く→涙」との対比的なティテールが、私の「切なさ」といった感情のデジャブを呼び起こしたのだろうか。

 

たとえば、いよいよ今日は、二人で散々プランを練りながらず〜っと楽しみにしていた恋人との沖縄旅行の当日──ところが! ホテルに到着して、なにか深刻な理由で喧嘩になってしまい、泣きじゃくる彼女……。その彼女が泣きながらもかぶっているこの日のために購入した麦わら帽子や、この日のためにせっせと荷造りしたキャリーバッグ……こういう本来なら「いい想い出をつくる」ためだけに準備してきたはずの無造作なグッズから孤立的に生じる違和感に(※そのギャップが激しければ激しいほど)私は猛烈な切なさを感じてしまう。あるいは、なんの前ぶれもなくいきなりの別れ話を切り出したとき、相手がたまたま来ていた能天気なキャラがプリントされたTシャツだとかも切なくてたまらない。

 

「切なさ」の解説としては、まだ全然物足りなくはあるものの、このような「胸がしめつけられるような気持ち」を、あんなにもシンプルなタッチで表現し尽くす楽天パンダの作者とは……やはり「天才!」としか賞賛のしようがないのであった。

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