賛否あつまる「麦茶くださいでしょ」を、世界に普及する子育てプログラムで考えてみると…。ママ友、夫婦間の会話も子どもの “お手本” に。

コラム

 

東海大学客員教授の岸田雪子氏が子育て周辺の課題を考える連載「Bloom Room」。笑顔の “つぼみ” を花開かせる小部屋です。今回は「子どもの言葉づかい」について。

 

子どもたちの夏休み期間中、親子の会話の時間が増えた、というご家庭も多いかもしれません。先日はネット上で「麦茶くださいでしょ」という親の言葉が話題になりました。概要としましては、

 母親)「何か飲む?」

 息子)「麦茶」

 母親)「麦茶入れてくださいでしょ」

 息子)(何も言わずに飲む)

 母親)「ありがとうは?」

というやりとりだったようです。

お母さんの言葉に対しては、「ありがとうの強要になっている」という異議や、「将来、『しょうゆ!』しか言えない大人になったら困るからしつけは必要」という声もありました。

 

100人いれば100通りの子育てがあるのが大前提ではありますが、その一つの軸として、私は子育て支援の取材を通して出会った「ポジティブ・ディシプリン」を、親子の会話のヒントにしています。「ポジティブ・ディシプリン」は、世界36カ国以上に普及している親支援プログラムで、次の4つの柱を基本としています。

 1. 長期的な子育ての目標を持つ

 2. 子どもが安心できる環境で、子どもが理解できるよう情報を与える

 3. 子どもの気質や、発達による感じ方を理解する

 4. 目の前の課題を解決する

というのが大まかなステップです。

 

この「ポジティブ・ディシプリン」で「麦茶」をめぐるやりとりを考えてみます。まず、長期的な子育ての目標が、このお母さんが求めているような「丁寧な言葉づかいと、感謝の言葉を自然に口に出せる子になってほしい」だとします。
目標が定まったら、それを子どもに伝えるにはどんな表現が適切か。子どもの年齢や気質を踏まえると、どんな伝え方がいいだろう? と考えてみます。
さて、「麦茶」とだけ言って、黙ってごくごく麦茶を飲み始めた子に、どう伝えるのが良さそうでしょうか。

 

方法はいくつかありそうです。例えば、「子どもが理解できるように伝える」ことを意識すると、おそらく子どもは「お母さんに注いでもらった」というより「麦茶を飲めること」、で心がいっぱいのようです。そんな時は、例えば
「麦茶、美味しかったね」と寄り添いながら、
「誰かに何かをしてほしい時は、○○してくださいってお願いするといいよね。お母さんにも、麦茶くださいって言ってくださいね」
と、お母さんも丁寧に話してあげると、子どもは真似しやすいかもしれません。また、
「何かしてもらったら、ありがとうって言おうね。ありがとうって言ってもらえると、お母さん、嬉しいな」
と言えば、子どもにも伝わりやすいでしょう。コミュニケーションに欠かせない、「相手の気持ち」に思いを馳せる練習にもなります。
もしも、「こういう時は、ありがとうだよ」とだけ伝えられると、親御さんが伝えたかったことが、実は伝わらない、という場合もありそうです。

 

子どもは身近な大人の会話を真似します。特に、大好きなお母さんお父さんの言葉づかいは、子どもたちのコミュニケーションのお手本です。ご両親同士の会話、あるいは、親御さんとお友達との会話。あるいは親御さんが誰かに電話で話しているときの口調、あるいは、家にやってきた宅配の配送員の方に対して「ありがとうございます」と口にしているのを、子どもたちは吸収していきます。もちろん、親御さんが子どもに何かしてもらった時に、「ありがとう、嬉しいよ」と口にしていれば、「ありがとうと言う言葉は、言ってもらった人も嬉しくなるんだ」と、子どもたちも実感できるでしょう。そんな場面で「ありがとうって素敵な言葉だよね」と共感してあげると、より理解を助けることにつながるでしょう。

 

いつも理想的な会話なんて、もちろん無理なことです。私も、「ありがとう」を言い忘れてしまうことだってあります。慌ただしい日常の中で、いちいち「さて、どう伝えようか」などとのんびり考えてもいられないでしょう。
それでも、無理なく、心と時間にゆとりのあるとき、「本当は子どもに何を伝えたかったんだっけ」と少し考えてみることは、親御さんが「本当に子どもに伝えたいこと」を伝える助けとなってくれるはずです。

 

岸田雪子さんは、記事にある「ポジティブ・ディシプリン」について、著書で詳しく紹介しています。また、子育てと介護のダブルケアの日常を綴ったブログも更新しています。
よろしければ、是非ご覧になってみてください。
>>「スウェーデンに学ぶ幸せな子育て」
>>https://ameblo.jp/yukik042

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