「幼児を犠牲にしないで!」 “9月入学のリスク” について1万人アンケートをもとに考えました

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元日本テレビニュースキャスターで、現在は多くのメディアでコメンテーターを務める岸田雪子氏が、いじめ、虐待、子育て、介護など、親子間コミュニケーションを始めとする、身近な悩みや課題を取り上げる新連載「岸田雪子のBloom Room(ブルームルーム)」。親子の笑顔の“つぼみ”を花開かせる小部屋です。今回は、話題の「9月入学」について、 “親子の目線” に絞って考えてみたいと思います。

 

 

長い長い休校生活の終わりが近づき、ほっとする一方、失われた「学校生活」をどう挽回できるのか。そんな不安の中、急浮上しているのが "来年8月までを1学年" と考える「9月入学・始業」です。これは最善の策なのでしょうか。

 

何より大切なのは「当事者の声」。そんな思いで、Facebook naviを通じてアンケートを行ったところ、1万5000近くの回答を頂きました。みなさま、ありがとうございます。コメントから見えてきたのは、お子さんの年齢によって賛否が分かれるという実情です。

 

 

■「0学年」浮上で、未就学児の親たちが怒り

 

「反対」が特に多かったのが、幼稚園や保育園に通うお子さんを持つ親御さんたちでした。

 

コロナのおかげで年少1年間も最後までできなかったのに来年急に卒園させられるのは納得できません。

 

未就学児を犠牲にする9月入学は反対です。

 

小学生以上の事しか考えていない、幼稚園生でも納得出来る制度にしてほしい

 

高校生のツイッターから始まった「9月入学」の議論ですが、実は小学校に入る前のお子さんたちに大きな影響があります。政府が検討している3つの案のうち、①来年秋入学の小1を下の学年と合体させた「一括方式」と、②4~8月に「0年生」期間を設ける案では、いま幼稚園や保育園で年中さんの子どもたちの一部が小学生になるのです。

 

アンケートの中には、「計画して4月生まれにしたのに不利」という声や、「同じ学年が分断されてしまう」という声も複数ありました。政府が検討する3つ目の案、③「段階的実施方式」でも、移行期間の5年間は、1か月ずつ上の学年に繰り上げるため、同学年だった友だちと強制的に分けられる子どもたちが出てくることになります。

 

 

■発達ギャップ、「7歳4か月」の1年生、受験・就職で激戦、という難題

 

 

「発達差」についても心配の声があがりました。「一括方式」だと、同じ学年内で年齢幅が17か月にわたり、学習や体力でも大きなギャップが生まれます。


この場合、最年長の子は「7歳4か月」で小学1年生になることになります。世界的には、義務教育は6歳からが主流で5歳も増えていること、最近の子どもたちは発達が早くなっていることを考えると、「7歳4か月」は遅いと言えるでしょう。義務教育のスタート年齢を遅くする、という根本的な変更まで、このコロナ禍ですべきことなのか、慎重に考える必要があります。


もう1つ、移行時はこの学年の人数が本来の「1.4倍」に膨れ上がるという問題もあります。入試や就職での激戦が予想され、この世代だけが厳しい人生を背負わされる不平等にも、目を向ける必要があるでしょう。

 

 

■「賛成」が多かった、高学年の親たちの声

 

一方で、「賛成」意見は、特に小学校以上の最終学年にお子さんがいる親御さんから多くあがりました。

 

高3と中3の子供がいます。最後の体育祭、文化祭、今まで2年間頑張ってきたのに最後の大会も全部中止になってしまった部活生…この年だけ今年の3年生だけが我慢をしなければいけないのは余りにもかわいそうで慰める言葉も出ません…

 

中3小6の、大事な時期の子ども達が居ます。子ども達がゆっくりと一年かけて学べる様に、9月新学期を実現させるべきだと思います。

 

部活、修学旅行等全て経験させてあげたい。

 

お子さんがいるとコメントされた方(57人中)の賛否では、「賛成」「反対」がともに47%と同数になりました。一方、年齢別で見ると「賛成」は40代と50代が半数以上を占めるのに対して、「反対」は30代と40代が6割以上を占めています。お子さんの年齢が比較的高い層が「賛成」に、低い層が「反対」に、傾いている様子がうかがえます。

 

9月入学についてどう思いますか?賛成派の年齢比

 

9月入学についてどう思いますか?反対派の年齢比

 

 

■高3生を「不運」で終わらせない、「大学の9月入学」という道

 

高校3年生にとって「人生で一度きり」のチャンスが失われることは重大で、その救済の場を作ることは大人の責任だと思います。例えば高校で「来年8月まで在籍する」道を開き、大学の9月入学の枠を拡大するというのも一案です。各大学の試験を冬と夏の2回開催することは、今でも大学の学長の判断で可能です。

 

「大学の9月入学」の枠を増やすことは、幼稚園・保育園児や小中学生を巻き込まなくてもできるのです。アンケートでも「賛成」の理由に多かった「留学しやすい」「真冬の受験を避けたい」といった声にも応えることができるでしょう。もちろん、就職の新卒一括採用の見直しも同時に必要です。

 

最終学年以外の子どもたちの学習の遅れについては、「学年をまたいで2~3年がかりで習得してよい」と文科省も方針を示しています。オンラインの設備を整え、詰め込みにならない学びの実現に、今は全力を注ぐ必要があるでしょう。
 

 

■「どうせ混乱するなら今しかない」の危うさ

 

9月入学が30年以上前から議論されながら実現しなかったのは、親子に降りかかる様々な課題を乗り越えることが難しかったことが背景にあります。「今はコロナで混乱しているから、チャンス」という論調は危険です。

 

アンケートでは「9月入学そのものは賛成だけれど、子どもたちが困るのは良くない」「コロナ禍ではなく、落ち着いて時間をかけて考えるべき」という声も多く寄せられました。

 

「巣ごもり」と「休校」で、家庭は疲弊しています。家庭に新たな負担をかける結論は避け、高校3年生に学びと体験の機会を確保することに、国も自治体も経済界も、注力すべきではないでしょうか。

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ジャーナリスト・東海大学客員教授

岸田雪子

キャスター・ジャーナリスト。東海大学客員教授。日本発達心理学会員。早稲田大学法学部を卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了後、日本テレビ入社。報道局社会部記者、政治部記者として事件・災害・教育・医療・...

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