「高齢者のストーカー化」現象を、“背景”だけではなく“脳科学”の見地からも考察する

コラム

 

 
29歳のアイドルに熱を上げた63歳の男性がストーカーと化して逮捕されたニュースは、高齢化社会とアイドル戦国時代、2つの社会現象が重なったところに起きたように見える事件だ。

 
こんな深刻な論調の冒頭文ではじまる記事を『現代ビジネス』が配信していた。新潟県で長く活動してきた「ご当地アイドルのパイオニア」と呼ばれる某女性グループのメンバー・Kさんが結婚したことに不満を持った、神奈川に在住する63歳の派遣社員男性が、謝罪を要求する脅迫的なメールを複数回彼女に送り、強要未遂の疑いで逮捕された事件について掘り下げたものである。

 
アイドルに熱をあげる高齢ファンのストーカー化──このような現象の背景をアイドルライターの高山登さんは、以下のように同記事内で語っている。

 

 
「アイドル戦国時代といわれる時代に入って、各グループがファン獲得の競争を激しくする中、高齢者のファンも大きな顧客層になって、夢中になる60〜70代のファンも増えている」

 
「これは昔、テレビでしか見ることのできなかったアイドルが“会える”商法を主流にしたことも大きい」

 
「アイドル自身がSNSでファンと直接、メッセージのやり取りができる時代ですからね。昔もアイドル熱は高かったですが、活動期間も短かった。ピンクレディもキャンディーズもたった5年でした。そうするとファンも同時に卒業していました。松田聖子のような息の長いアイドルも、アイドルから本格的歌手になることで、応援の質を変化させてきました」

 
「でも、いまはアイドルの活動期間が長く、卒業できないファンがいます。15年前に40代後半だった男性が、アイドル戦国時代をずっと追っかけたら60代。特にキャバクラなど水商売で遊ばないタイプがアイドルにのめり込むと、擬似恋愛に免疫がなく、ストーカー化しやすいこともあります」

 
なるほど、じつに納得がいくロジックだと思う。しかし、つい最近、お店の女性と会話ができるシステムの某カラオケパブで、前出の理屈だと「擬似恋愛には免疫がある」はずの50代高齢男性が20代の女性に対して起こしてしまった、あの悲しい事件はまだ記憶に新しい。

 
私は、アイドルにかぎらない娘ほどの年ごろの女性に高齢男性が横恋慕してしまう心理を、脳科学的な見地から「見返りを求めすぎ」だと分析する。「若い男だって、求愛する相手にそれなりの見返りは求めるでしょ?」といった反論はあるかもしれない。ただ、求めてはいるんだけど、その切迫感に大きな違いがある。

 
中高年世代は、恋愛したらどうしても

 
「このヒトしかいない!」

「この出会いを逃したら、次がない!」

「今回がラストチャンス!」

 
……と、自分を追い込むメンタルブロックが働いてしまう。

 
「次の試合はない」

 
……と勝手に思い込んでしまうのだ。

 
でも、「もうおじさんだから…」という、自己へのレッテル張りは絶対に禁物! まだ若ければ、仮にフラれても「もっとオレに相応しい素敵なヒトがいるんじゃないか…」と自然にリセットできるわけで、そんな若者のポジティブマインドは、何歳になっても素直に見習うべきなのではなかろうか。

 

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