阿部寛の日曜劇場『DCU』 どうしてショボく感じてしまったのか冷静に理由を考えてみた

コラム

citrus 堺屋大地

 

今年1月~3月に放送された阿部寛さん主演の日曜劇場『DCU』(TBS系)。高視聴率を記録し数字上では大ヒットしました。が、今、冷静になって振り返ってみるとショボさが気になって……。『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つ筆者が解説します。

 

 

■物語後半の舞台が水族館、温泉、水槽……

『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』シリーズを生み出し、TBSドラマの看板枠となっている日曜劇場で放送された『DCU』。第1話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)が16.8%と好スタートを切り、全話(全9話)の世帯平均視聴率は14.4%という大ヒットを記録したのです。

海上保安庁が新設した「潜水特殊捜査隊」、通称「DCU(Deep Crime Unit)」の活躍を描いた物語で、ハリウッド大手制作プロダクションと共同制作という触れ込みで期待が膨らんでいました。

公式サイトのINTROのページを見ると、次のように記してあります。

 

従来の海上水域だけでなく警察の捜査では困難な「危険極まりない日本全国の河川や湖」など、あらゆる水中に潜り隠された証拠を探し事件を解決する。

 

水際捜査に特化したエキスパート集団「DCU」のメンバーは、隊長・新名正義(阿部さん)を筆頭に、15年前の海難事件で命を救ってくれた新名を慕う若手隊員・瀬能陽生(横浜流星さん)ら6名。

 

第1話は、群馬県のダム湖からある人物の頭骸骨の破片が発見されたことをきっかけに、その遺体の謎に迫っていく展開。水深100mの湖底を新名たちが潜水捜査して真相を解明していくストーリーが、スリリングに描かれました。日本のドラマでは珍しいダイナミックな潜水シーンに興奮したものです。

……しかし。

この『DCU』、予算の都合だったのかなんなのか真相は定かではありませんが、醍醐味であるはずの潜水シーンが、回が進むごとにどんどんショボくなっていったのです。

 

例えば第4話は、申し訳程度に一応わずかながら海に潜っての捜索はあったものの、水中から撮影しての潜水シーンはほぼナシ。

第6話・第7話の舞台は、家族連れやカップルで賑わう神奈川県の「横浜・八景島シーパラダイス」の水族館。

第8話の舞台は、三重県の「ナガシマリゾート」の温泉。水深1mにも満たないレジャー施設の温泉に新名らが潜っていました……。

同じTBS系で放送されている朝の情報バラエティ番組『ラヴィット!』のロケかと思うようなセレクトです。

 

そして、迎えた最終の第9話。ここまで潜水シーンの予算を抑えてきたのだから(と勝手に推察)、海や湖や河川に潜る水中からのダイナミックな映像をたっぷりと観られるはず!

……という期待は見事に裏切られます。

ネタバレになるので詳細は伏せますが、最終話で判明した黒幕とのバトルは施設内の水槽。ダイバーの潜水訓練用で水深は深いですが、海でも湖でも河川でもなく水槽だったのです。

だったら最初から、 “ハリウッド大手制作プロダクションと共同制作” 、 “「危険極まりない日本全国の河川や湖」などの事件を解決” などと煽らないでほしかった、というのが正直な感想。

そんなふうに風呂敷を広げていなければショボさは感じず、素直に楽しめたかもしれないのに……。

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