千鳥ノブに見る「不幸な来年」と占ってもらった人の幸運さとは

コラム

 

12月19日、『ぐるナイ ゴチ大清算! クビは生放送で発表! 加藤浩次&橋本環奈がオニになるSP』(日本テレビ系)を観ていると、お笑いコンビ『千鳥』のツッコミ担当・ノブ(39)が、占いタレントのゲッターズ飯田から「来年はすべてを失う」「原因はスキャンダルです」と占われて困惑しているシーンがあった。

 

いまや飛ぶ取り落とす勢いの千鳥である。私の雑感では、ボケ担当の相方・大悟(39)とほぼ同じ程度のメディア露出度で、ダウンタウンやオードリーなどと同様、コンビ格差もなく“二人とも”がまんべんなく安定的な人気を博している印象だ。「わし」を一人称としつつ「じゃ〜」を語尾とするハスキーボイスでのツッコミは、やたら耳に残る。もちろんネガティブに、ではない。お笑い芸人として、タレントとしては最大の武器であり、たぐい希なる才能・個性だと言えよう。高校時代の同級生を妻にめとった既婚者であるらしく、ちなみにコレはどうだっていいエピソードだが、じつは蕎麦アレルギー……なのだそう。

 

そんな順風満帆な売れっ子芸人が「スキャンダルで来年すべてを失う」と占いによって(そこそこの信憑性を匂わせる断定口調で)予言されてしまうとは、心穏やかじゃない話ではないか。今年はとくに、多くのお笑い芸人が一瞬で「すべてを失った」さまが、まだ記憶に生々しく残っている。だが、そういうさなかだからこそ、こういった“戒め”を年末のタイミングでいただけたということは、むしろラッキーなのかもしれない。来年に向けて、よりいっそうの細心の備えを誓うことができるからだ。「浮気はしません!」「裏営業もやめとこう…」「脱税は大丈夫か?」「麻薬は論外」……etc.

 

10ヶ月ほど前に出版した拙著『「モテ」と「非モテ」の脳科学〜おじさんの恋はなぜ報われないのか〜』(菅原道仁共著/ワニブックスPLUS新書)で、私は「モテるには占い師っぽいことをやればいい」と書いた。女性の悩みを聞いて「あなたは気丈に振る舞っているけど、本当は優しい人ですよね」みたいな感じで、誰にでも当てはまるような性格分析をすれば、「この人は私のことを理解してくれるかも」「私のことをちゃんと見てくれている」……と、相手の意識も変わってくる。そして、この「誰にでも該当するような曖昧で最大公約数的な性格をあらわす記述を、自分だけに該当する性格だと捉えてしまう心理学現象(=バーナム効果)を、もっと複雑かつ巧妙に使いこなすのが「占い師」という職業であり、たとえば只今スキャンダルまみれとなっているお笑い界に属しトップ圏内をひた走る一人の芸人に、「好事魔多し」といささか強い言葉で警告を発することこそが、占い師の存在意義だと私は考える。「実際に当たったか当たらなかったか」はさしたる問題ではなく、この“フック”をきっかけに、占われた当人が何事もない2020年を過ごすことができれば、それこそが一番の幸福なのである。

 

さて。同番組の千鳥ノブとゲッターズ飯田のやりとりは、オンエアのすぐ直後に某スポーツ新聞もネット上で報じていたが、そのコメント欄に

 

「パソコンを目の前に置いて、テレビの前にかじりついて、文字起こしのごとく、記事にしてんだね。今さっきテレビでやってたことじゃん。いいな、楽な仕事で」

 

……なんて書き込みをしているヒトがいた。ライター目線で語らせていただくと、「今さっきテレビでやってたことを、わずか1時間足らずで、面白い部分を抽出し、それなりに状況が理解できるような原稿に起こす作業」は、難易度にすればAランクに匹敵すると思うのだが……。「いいなー楽な仕事で」とおっしゃるなら、一度パソコンを目の前に置いて、テレビの前にかじりついて、やってみてほしい。

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